2026年4月23日木曜日

就職氷河期世代支援という欺瞞

 ―それは「支援」ではなく「補償」の問題である―

政府が就職氷河期世代に対する新たな支援策を打ち出している。
資産形成支援、住宅支援、家計改善のための専門スタッフ派遣――。

就職氷河期世代等支援(内閣官房ホームページ)

結論から言えば、この政策は本質を外している。

理由はシンプルだ。
これは「支援」の問題ではない。
「補償」の問題だからだ。


■ 氷河期世代の問題は個人の能力ではない

就職氷河期世代とは、バブル崩壊後の雇用崩壊期に社会に出た世代である。
しかし、この問題は単なる景気の悪化ではない。

以下の複合要因によって形成された「構造的損失」である:

  • 金融政策の失敗による雇用機会の喪失
  • 派遣法改正による非正規雇用の爆発的増加
  • 消費税・外注構造による雇用切り出しインセンティブ
  • 社会保険料の継続的上昇による可処分所得の圧縮
  • 政府の長期放置による問題の固定化

結果として何が起きたか。

初期キャリアの断絶が、そのまま生涯賃金の低位固定に直結した

これは能力の問題ではない。
スタートラインを破壊された問題である。


■ 「資産形成支援」が成立しない理由

政府は「資産形成支援」を掲げる。
だが、これは数値的に成立していない。

氷河期世代の所得中央値はおよそ300万円台半ば。
税と社会保険料を引けば、可処分所得はさらに減る。

ここで問いたい。

生活費がある状態で、何を原資に資産運用をするのか?

仮に極論として、

  • 生活費ゼロ
  • 税負担ゼロ

と仮定しても、NISAの年間投資枠すら埋まらない。

つまり、

入力(投資元本)が存在しない状態で、出力(資産形成)を求めている

これは政策ではない。
単なる論理破綻である。


■ リスキリングが機能しない構造

職業訓練やキャリアコンサルも同様に、本質解ではない。

理由は明確だ。

  • 転職=未経験扱い → 賃金は下がる
  • 中年未経験 → 採用されにくい
  • 在職訓練 → 実務と両立できない
  • スキル向上 → 賃金に反映されない

つまり、

どのルートを通っても賃金上昇経路が閉じている

さらに現実として、

  • 新卒初任給 > 氷河期世代の現在賃金
    という逆転すら起きている。
「経験豊富な中年」よりも「経験ゼロの新卒の給与のほうが高い」というこの現象は能力が報酬額に直結しないことを示している。

企業にとって氷河期世代は、

低コストで維持できる労働力

であり、

今さら賃上げするインセンティブが存在しない


■ 政策の本質的な誤り

政府の政策はこう分類されている:

  • 就労支援
  • 家計改善
  • 資産形成
  • 住宅支援

だが、この分類そのものが間違っている。

氷河期世代の問題は、

これからどう働くかではなく、
すでに失われたものをどう扱うか

である。

つまり、

未来の努力ではなく、過去の損失の問題


■ なぜ「支援」ではなく「補償」なのか

氷河期世代が被ったのは、

  • 所得機会の喪失
  • 資産形成時間の喪失
  • 社会保険上の優位の喪失

これらはすべて、国家の制度運用の結果である。

であれば本来必要なのは:

  • 所得補填
  • 社会保険負担の軽減
  • 生活コストの圧縮
  • あるいは限定的なBI

であって、

  • コンサル
  • 訓練
  • 家計指導

ではない。


■ 結論

氷河期世代は、

「努力が足りなかった世代」ではない。
「制度に初期条件を破壊された世代」である。

したがって、

必要なのは支援ではなく補償である。

そしてさらに重要な点はこれだ。

現在の財政規律の枠内では、その補償は実行できない。

つまり政府は、

  • 問題を理解しているにもかかわらず
  • 解決できない前提のまま
  • 「支援」という言葉で置き換えている

これは政策ではない。

責任の回避である。


■ 最後に

むやみに他者を攻撃するつもりはない。
しかし、

構造で生じた損失を、個人の努力問題として語ること

これは明確に誤りであり、許容しない。

氷河期世代の問題は終わっていない。
むしろ、これから本格的に顕在化する。

本件についての「解」は「経済成長を原資にした補償」以外にはありえない。