―それは「支援」ではなく「補償」の問題である―
政府が就職氷河期世代に対する新たな支援策を打ち出している。
資産形成支援、住宅支援、家計改善のための専門スタッフ派遣――。
就職氷河期世代等支援(内閣官房ホームページ)
結論から言えば、この政策は本質を外している。
理由はシンプルだ。
これは「支援」の問題ではない。
「補償」の問題だからだ。
■ 氷河期世代の問題は個人の能力ではない
就職氷河期世代とは、バブル崩壊後の雇用崩壊期に社会に出た世代である。
しかし、この問題は単なる景気の悪化ではない。
以下の複合要因によって形成された「構造的損失」である:
- 金融政策の失敗による雇用機会の喪失
- 派遣法改正による非正規雇用の爆発的増加
- 消費税・外注構造による雇用切り出しインセンティブ
- 社会保険料の継続的上昇による可処分所得の圧縮
- 政府の長期放置による問題の固定化
結果として何が起きたか。
初期キャリアの断絶が、そのまま生涯賃金の低位固定に直結した
これは能力の問題ではない。
スタートラインを破壊された問題である。
■ 「資産形成支援」が成立しない理由
政府は「資産形成支援」を掲げる。
だが、これは数値的に成立していない。
氷河期世代の所得中央値はおよそ300万円台半ば。
税と社会保険料を引けば、可処分所得はさらに減る。
ここで問いたい。
生活費がある状態で、何を原資に資産運用をするのか?
仮に極論として、
- 生活費ゼロ
- 税負担ゼロ
と仮定しても、NISAの年間投資枠すら埋まらない。
つまり、
入力(投資元本)が存在しない状態で、出力(資産形成)を求めている
これは政策ではない。
単なる論理破綻である。
■ リスキリングが機能しない構造
職業訓練やキャリアコンサルも同様に、本質解ではない。
理由は明確だ。
- 転職=未経験扱い → 賃金は下がる
- 中年未経験 → 採用されにくい
- 在職訓練 → 実務と両立できない
- スキル向上 → 賃金に反映されない
つまり、
どのルートを通っても賃金上昇経路が閉じている
さらに現実として、
-
新卒初任給 > 氷河期世代の現在賃金
という逆転すら起きている。
企業にとって氷河期世代は、
低コストで維持できる労働力
であり、
今さら賃上げするインセンティブが存在しない
■ 政策の本質的な誤り
政府の政策はこう分類されている:
- 就労支援
- 家計改善
- 資産形成
- 住宅支援
だが、この分類そのものが間違っている。
氷河期世代の問題は、
これからどう働くかではなく、
すでに失われたものをどう扱うか
である。
つまり、
未来の努力ではなく、過去の損失の問題
■ なぜ「支援」ではなく「補償」なのか
氷河期世代が被ったのは、
- 所得機会の喪失
- 資産形成時間の喪失
- 社会保険上の優位の喪失
これらはすべて、国家の制度運用の結果である。
であれば本来必要なのは:
- 所得補填
- 社会保険負担の軽減
- 生活コストの圧縮
- あるいは限定的なBI
であって、
- コンサル
- 訓練
- 家計指導
ではない。
■ 結論
氷河期世代は、
「努力が足りなかった世代」ではない。
「制度に初期条件を破壊された世代」である。
したがって、
必要なのは支援ではなく補償である。
そしてさらに重要な点はこれだ。
現在の財政規律の枠内では、その補償は実行できない。
つまり政府は、
- 問題を理解しているにもかかわらず
- 解決できない前提のまま
- 「支援」という言葉で置き換えている
これは政策ではない。
責任の回避である。
■ 最後に
むやみに他者を攻撃するつもりはない。
しかし、
構造で生じた損失を、個人の努力問題として語ること
これは明確に誤りであり、許容しない。
氷河期世代の問題は終わっていない。
むしろ、これから本格的に顕在化する。
本件についての「解」は「経済成長を原資にした補償」以外にはありえない。
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