1. 問題設定(前提)
- 日本は外為特会を通じて 巨額のドル建て資産(主に米国債) を保有している
- 対米関税交渉の結果、80兆円規模の対米投資 が政治的に約束された
- にもかかわらず、国内議論は
「円の財源が必要だ」「増税か国債か」
といった“円建ての財源論”に偏っている - 実態は ドル資産 → ドル投資 の話であり、
一般会計の議論に引きずり込むのは構造的に誤り
2. 技術的事実(外為特会の構造)
- 外為特会の主要資産は ほぼすべてドル建て
- 対米投資の支出も ドル建て
- よって実務的には
「ドル建て資産の付け替え」
に近い性質を持つ
→ 新たな為替リスクや通貨調達問題は本質的に発生しない。
3. 財政・為替の評価(外為特会を使う合理性)
- 外為特会は本来、
為替介入の損失吸収バッファ
として設計されている - 含み益は「ほくほく」ではなく、
ショック吸収のための緩衝材 - 一般会計を経由させるより、
外為特会内で完結させる方が制度目的に整合的
→ 為替バッファを維持しつつ、ドル資産の再配分が可能。
4. 実務上の注意点(突破ポイント)
(1) 米国債売却の政治コスト(最大の制約)
外為特会のドル資産を投資に回すには、
米国債を売却する必要がある。
しかし:
- 米国は日本の米国債売却を極めて嫌う
- 米国債市場の安定は米国の最重要関心
- 日本が大量売却すると「市場混乱 → 米国の政治問題」になる
→ したがって実務では
“米国債を売らずに投資する方法”
も模索する必要がある。
(例:米国債を担保にしたスワップ、JBIC/NEXI 経由の信用供与など)
(2) JBIC/NEXI のバランスシート制約
外為特会から資金を移す場合、
受け皿となる JBIC/NEXI にも制約がある。
- リスク管理枠
- 国際協力銀行法・貿易保険法の範囲
- 政策金融としての整合性
- 米国側が投資先を決めるという構造との整合性
→ 外為特会の資産をそのまま移すだけでは済まず、
制度改正・枠拡大・保証スキームの再設計 が必要。
(3) 投資条件の非対称性(利益配分の偏り)
米国側の提示する条件では:
- 運用益の大部分(9割)が米国側に帰属
- 日本側は“元本提供者”としての役割に限定
- 高利回り米国債 → 低パフォーマンス投資
という資産入替になる可能性
これは 財政悪化ではなく、政治コストとしての機会損失。
5. 結論(本質の整理)
対米投資80兆円は、
財源問題ではなく、資産配分問題。
外為特会を使うことは:
- 為替の整合性
- 財政の整合性
- 外交の整合性
のすべてを満たす。
論点は「財源の有無」ではなく、
どのドル資産を、どの条件で、どのスキームに付け替えるか。
核心はー
すでにドルで持っている資産を、ドルで使う話を、なぜ円の財源論にしているのか。