2025年6月25日水曜日

金融機関が社会的責任の一部を放棄した状況に思うこと


銀行は株式会社であるべきか──金融の公共性を取り戻すために

私たちは今、「銀行」という存在を根本から問い直すべき時代に来ている。
通貨の流通、信用の供給、預金の管理──これらはすべて、社会の命綱である。

だが、そのインフラを担う銀行が、現在も株式会社であることの正当性はあるだろうか?

近年、銀行が硬貨の取り扱いを次々と有料化し、
「儲からないから」という理由で国民の生活インフラを切り捨てている。
この現実が、制度疲労の兆候であることは明らかだ。


◆ 金融という「公共インフラ」が営利事業でよいのか

株式会社には、株主に対する収益義務がある。
これは企業として当然の姿勢だろう。だが問題は、銀行の役割が通常の企業と異なる点にある。

銀行は、国家の通貨制度を媒介し、国民経済の血流を管理している。
そして、その活動の根幹には国家の信用と、通貨の法的効力がある。

つまり銀行は、「国家に許可された独占的事業者」なのだ。
にもかかわらず、それを民間株式会社に委ねていること自体が、本来異常なのではないか。


◆ 現代技術が可能にする「通貨発行=通貨管理」

現在のIT技術、特にブロックチェーンやAPI連携、デジタル本人確認の進化により、
通貨の発行と管理を一元化することは技術的に完全に可能になっている。

  • 日銀が通貨を発行し、その流通もデジタルで管理する

  • 個人や企業が直接、中央銀行に口座を持つ

こうしたモデルは、すでに海外で検討が始まっており、理論的には現実化できる。
つまり、「銀行」が媒介者である理由は、もはや技術的には存在しない


◆ 現実的な対案としての「ユニバーサルサービス義務」

すぐに銀行を国有化することが困難であっても、公共インフラとしての最低限の責任を課す制度は設計できる。

それが、NTTやJPに課されたようなユニバーサルサービス義務である。

● 義務項目の例:

  • 硬貨の最低限の取り扱い(無料枠または低額手数料)

  • ATMの全国均等設置(自治体単位での最低数義務)

  • 紙の通帳の提供・維持(高齢者・希望者対応)

  • 高齢者・障害者向け対応窓口の確保

  • デジタル通貨や地域通貨との連携義務

● 遵守インセンティブ:

  • 国からの補助金(ユニバーサルサービス基金)

  • 税制優遇や国債取扱権などの特典

  • 義務違反には課徴金または行政処分


◆ 制度設計案:多様な選択肢による再構築

モデル特徴メリットデメリット
株式会社型現行の銀行制度資本効率が高い公共性が弱く、格差が拡大
ユニバーサル義務型民営だが公共責任を課す公平性と柔軟性の両立運用と監視の難度
国営型全銀行を公営化公平性が高い柔軟性に欠ける可能性
中央銀行直結型個人・企業が日銀口座保有効率性・透明性プライバシーと集中リスク
ハイブリッド型公営+民営の併存地域最適化が可能制御と調整が複雑

TheAnswersPartyとしては、このような多様な制度設計をオープンに議論し、社会的合意の上で再構築していくべきだと考える。


◆ 結論──銀行は、誰のためにあるのか

銀行は、国家の許認可のもとで「信用と通貨を扱う」公共的事業体である。
それを株式会社の論理でのみ運営するのは、制度的にも倫理的にも破綻している。

私たちは今こそ、「公共としての金融」を再定義しなければならない。
その一歩として、銀行の非株式会社化、もしくはユニバーサルサービス義務の制度化は真剣に検討されるべきである。

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