2025年11月17日月曜日

精神医療の構造的欠陥と社会的損失

1. はじめに:精神医療が抱える“構造的矛盾”

精神医療は本来、人間の内側を扱う領域である。
しかし現在の日本では、「医療」と呼ぶには構造的な条件を満たしていないケースが多い。

原因は単純だ。

精神科が扱うべき因果が“物理ではなく、構造と文脈”だからである。

それにも関わらず、現場の診療は“症状”だけを切り離して扱う。
この矛盾こそが、医療としての根本的破綻を生んでいる。


2. 医療として成立するための条件

本来、医療には最低限の成立条件が存在する。

① 原因の特定
② 個体のモデル化
③ 介入の再現性
④ 専門家の判断が患者より精密であること

精神医療は、このうち複数が成立しにくい構造にある。


3. 精神科特有の問題:原因が“脳”ではなく“環境”にあることが多い

多くの「精神症状」と呼ばれているものは、実際には

  • 労働環境

  • 人間関係

  • 社会的プレッシャー

  • 不合理な扱い

  • 生活構造の破綻

こういった**外的ストレスに対する“正常な反応”**である。

しかし診療現場では、これらを原因として扱わず、ただ“症状”に薬を当てはめていく。

結果、

“社会由来の痛み”が“個人の病気”として処理される。

これは医療行為として因果が成立していない。


4. なぜこうなるのか:精神医療の教育構造の欠陥

精神科医の教育では、

  • 社会構造

  • 倫理モデル

  • 個人が置かれた文脈

  • ストレス因果

  • 価値観と行動の連動

  • 個人史の構造化

これらを読む訓練がほぼ提供されていない。

扱うべき対象は“人間全体”なのに、教育は“脳の病気”としてしか扱わない。

この矛盾が、精神医療を医療として成立しにくい領域にしている。


5. 過剰投薬の構造:保険制度が招く“漫然治療”

保険制度の仕組み上、

  • 長期処方

  • 予防投薬

  • 微量を継続させる

  • 本質的改善が目的にならない

こういった「過剰医療」を助長する構造がある。

特に精神科では、
医学的根拠の乏しい「予防的処方」が常態化している。

結果として、

  • 意欲の低下

  • QOLの制限

  • 社会復帰の遅れ

  • 長期通院化

  • 医療依存の固定化

これらの問題が生まれる。

もはや医療というより、「状態維持による産業化」と呼んだ方が正確である。


6. 社会的損失:本来“壊れる必要のなかった人”が壊れていく

本来、環境が悪いだけの人が、

  • 自己責任化され

  • 病名を与えられ

  • 薬物療法で鈍らされ

  • 社会から切り離され

  • 労働力として失われる

これは個人の問題ではなく、
社会の側の損失であり、構造的失敗である。


7. 対案:国立医療監査法人+AIによるカルテスクリーニング

精神医療の構造問題は、個人の努力では解決できない。

必要なのは制度の更新である。

① 国立医療監査法人の設立
精神科領域を中心に、投薬・診断・治療プロセスを第三者が監査する仕組み。

② AIによる電子カルテのスクリーニング

  • 過剰投薬

  • 意味のない長期処方

  • 誤診パターン

  • 不自然な診療コード

  • ガイドライン逸脱

これらを自動検出して是正する。

これにより、

  • 過剰医療の削減

  • 保険財政の適正化

  • 患者のQOL向上

  • 本来必要な医療の優先

  • 社会損失の縮小

が実現できる。


8. 結語:これは「医師の問題」ではなく“構造の問題”

医師個人の善悪ではない。
精神科に限らず、
構造が誤っていれば、正しい医療は成立しない。

精神医療の問題は、
患者でも医師でもなく、
制度が“人間の構造”を扱うように作られていないことにある。

解決すべきは個人ではなく社会。
更新すべきは感情ではなく構造。

そしてこれは、
未来世代のために必ず必要な議論である。

0 件のコメント:

コメントを投稿